約8分 · 2026-10-22 更新

海外旅行保険の書類:日本の保険会社が実際に求めるもの

診断書と明細付き領収書の違い、所定用紙の落とし穴、キャッシュレス診療と立替払いの分かれ目、クレジットカード付帯保険で請求が通らなくなる条件まで、受け取る順番に沿って。

旅行者が診療報告書と領収書をスマートフォンで撮影している様子(イメージ)

海外で医療機関にかかったあと、請求が通らない理由はほとんど同じところに集まります。治療の内容ではなく、紙の形です。金額が一括でまとめられていた。診断名が書かれていなかった。原本を提出せずに写しを送った。そして渡航先を出てから取り寄せようとした。

この記事は、受け取る順番に沿って整理したものです。保険の約款は会社ごとに違うので、最後の確認先はご自身の保険会社になります。

書類より先に、これだけ

容体のほうが先です。書類の話は後回しです。次のいずれかがあれば、すぐ115へ電話するか最寄りの救急外来へ向かってください。電話する番号は115です。日本の119ではありません。

  • 呼吸が苦しい、または安静にしていても息が浅く速い
  • 胸の痛み、あるいは顎や左腕に広がる痛み
  • 片側の手足の脱力、顔のゆがみ、言葉が出にくい
  • 押さえても止まらない出血
  • 意識を失った、初めてのけいれん、混乱が進んでいる
  • 唇や舌が腫れ、同時に息苦しさが出ている

救急搬送や入院になった場合でも、書類は後から整えられます。順番を逆にしないでください。

受付で名前が一致しないと止まる

いちばん多い差し戻しの原因は、意外にも氏名の表記です。保険証券のローマ字表記と、医療機関が発行する書類の表記。これが一致している必要があります。パスポートを出して、綴りをその場で確認してください。ミドルネームの扱いや、ヘボン式かどうか。ここで食い違うことがあります。

二つの紙は役割が違う

診断書と領収書は別のものです。片方しか受け取らずに帰国して困る人が一定数います。

  • 診療報告書または診断書。診断名、いつからの症状か、実施した検査と処置、処方した薬、担当した医療者の資格情報が入ります。英文であることが前提です
  • 明細付きの領収書。診察、検査、薬、処置、交通にかかる部分が項目ごとに分かれていること。一括表示のものは、保険会社がどこまで補償対象か判断できないため戻されやすい
  • 検査結果の写し。必須ではないことも多いですが、同じ症状で二度目にかかるときに自分のために役立ちます
  • 薬局で別に買った薬のレシート。処方の記録とつながっていないと対象外になることがあります

所定用紙という落とし穴

日本の保険会社は、自社の所定用紙への医師の記入を求めることがあります。現地で受け取った英文報告書とは別に、帰国後にあらためて記入を依頼する形です。これに気づくのは請求の段階。そのときにはもう渡航先を離れています。

対処はひとつだけです。出発前に、自分の契約で所定用紙が必要かどうかを確認しておく。必要なら様式を印刷するか、画面で見られる形で持っていく。現地の医療者は、英文であれば記入そのものには慣れています。

キャッシュレスで済む場合と、立替になる場合

提携のある医療機関で、かつ事前にアシスタンスサービスへ連絡していれば、自己負担なしで受診が完結することがあります。一方で、連絡せずに受診したあとから適用を求めても通らない契約があります。この差は、治療の内容では決まりません。手順で決まります。

連絡は、受診前にするのが原則です。深夜でも窓口は動いていることが多い。症状が落ち着いてから、ではなく、受診を決めた時点で一本入れてください。立替になった場合は、支払いの記録を残します。領収書と、カードの明細の両方。

クレジットカード付帯保険で起きる誤解

カードに保険が付いているから大丈夫、という前提が崩れる場面が二つあります。ひとつは、旅行代金をそのカードで払った場合にのみ適用される条件が付いているとき。もうひとつは、治療費の上限が低いとき。入院が絡むと足りなくなります。

複数のカードで上限が合算される仕組みもありますが、傷害死亡の部分は合算されない、といった例外があります。出発前に、治療費用の上限額と適用条件の二点を読んでおく。それだけでも違います。

提出の期限と、原本の扱い

  • 請求には期限があります。帰国後すぐに動けないこともあるので、書類がそろった時点で一度連絡しておく
  • 原本の提出を求められる場合があります。送る前に、全ページを撮影または複写して自分の控えを残してください
  • 撮影は、受け取ったその場で。部屋に戻ってからでは、どこかに紛れます
  • 電子メールで受け取った書類も、添付ファイルのまま放置せず別の場所に保存しておく
  • 領収書の通貨と日付が読める状態か確認する。かすれた感熱紙は時間が経つと消えます

往診を受けた場合に足りがちなもの

滞在先での診察でも、必要な書類は病院と同じです。違う点はひとつだけです。終わったあとに、医療者が帰ってしまう。だから渡す側の責任として、英文の報告書と明細付きの領収書は、帰る前にその場でお渡ししています。

私どもの体制についても明記しておきます。各地域には、その土地に暮らし、医療従事者の資格を持つ医師・看護師がおり、ダナンから人を向かわせることはございません。ダナン、ホイアン、ホーチミン、ハノイ、クアンビン(ドンホイ)には、ご来院いただける診療所もございます。書類のお受け取り方法は、往診の前にあらかじめご案内いたします。

入院や搬送が絡むとき

入院、転院、医療搬送が必要になった場合、判断は保険会社のアシスタンス窓口と医療機関のあいだで進みます。本人や家族がすべきことは二つです。連絡を一本化し、誰が何を言ったかを時刻つきで書き留めておく。担当者が交代すると話が最初に戻ることがあります。そのときに自分の記録が効きます。

英文の紹介状を依頼してください。受付でまた一から説明する手間が消えます。

出発前にやっておくと楽なこと

  • 保険証券の番号とアシスタンス窓口の連絡先を、紙と端末の両方に持つ
  • 常用薬の成分名、用量、服用回数を英文で一枚にまとめる
  • 所定用紙の有無と、治療費用の上限額を確認する
  • 家族に、契約内容の置き場所を伝えておく

参考文献

  • 外務省 海外安全ホームページ: https://www.anzen.mofa.go.jp/
  • 外務省 海外旅行登録 たびレジ: https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
  • WHO — Travel and health: https://www.who.int/health-topics/travel-and-health
呼吸が苦しい、胸が痛む、出血が多い、意識がはっきりしない、脳卒中が疑われるなど緊急の場合は、どうか往診をお待ちにならず、まず115へお電話いただくか、最寄りの病院へ向かってください。

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