約10分 · 2026-10-22 更新

手足口病:ベトナムで子どもが発熱したとき、見張るのは熱ではない

水痘やヘルパンギーナとの見分け方、口の中が痛くて飲めない子に水分を入れる具体的な手順、そしてベトナムで比重の大きいエンテロウイルス七一型による神経の合併症の兆候。

小さな子どもの口のまわりの発疹を母親が確認している様子(イメージ)

手足口病は日本でもありふれた病気で、だからこそベトナムで出たときに油断されます。違うのはウイルスの顔ぶれです。この地域では、神経の合併症を起こしやすい型の比重が大きい。年に二回ほど増える時期があります。春から初夏、そして秋から年末にかけてです。

この記事は二つのことだけを扱います。口が痛くて飲めない子にどう水分を入れるか。そして、いつ様子を見るのをやめるか。熱の高さは、どちらの判断にもほとんど使えません。

先に読む:神経の合併症の兆候

小児の救急が動くきっかけは、発疹の見た目ではありません。親が見た動きの説明です。だから以下は、そのまま口に出せる言葉で並べました。救急番号は115。日本の119とは違います。一つでも当てはまったら、連れていってください。発疹が軽く見えても同じです。

  • 眠っているときに体がびくっと跳ねる動きが、何度も繰り返される
  • 歩くとふらつく、座っていても体が揺れる、手が震える
  • 吐くことを繰り返す、水分がまったく入らない
  • 異常に眠い、呼んでも反応が鈍い、逆にずっと泣きやまず落ち着かない
  • 息が速い、脈が速い、呼吸が浅い
  • 高熱が三日を超えて続く、または熱が下がったあとに様子が悪くなった
  • 半日以上おむつが濡れていない、口と唇が乾ききっている

寝入りばなのびくつきは、親の目には寝ぼけや夢と区別しにくい動きです。けれどこれが繰り返すなら、見張る段階は終わっています。

どこに何が出るか

名前のとおり、手のひら、足の裏、口の中に出ます。それに加えておしりと太ももの付け根、ひざ、ときに肘にも出ます。水ぶくれは丸ではなく楕円です。皮膚の線に沿って並ぶことがあります。かゆみより痛みが前に来るのが特徴で、手のひらと足の裏にできたものは、歩くのと物を持つのを嫌がる原因になります。

口の中の病変がいちばんつらい部分です。のどの奥、舌、ほおの内側に浅い潰瘍ができ、唾を飲むのも痛い。だから食べない、飲まない、よだれが増える。発熱より先に機嫌が悪くなる。珍しくありません。

似ているものとの切り分け

  • 水痘:体幹から始まって全身にばらばらに出る。かゆみが主役で、新しいものと乾いたものが混ざる
  • ヘルパンギーナ:のどの奥だけに潰瘍ができ、手足には出ない。高熱が出やすい
  • 虫刺され:左右非対称で、服で覆われていない場所に偏る
  • 口内炎:一つか二つで、手足には何もない

確定診断に検査が必要な場面は多くありません。診察する側が見ているのは、どのウイルスかよりも、水分が足りているか、神経の兆候が出ていないかのほうです。

口が痛い子に水分を入れる

ここが実務の核心です。脱水で入院になる子のほとんどは、病気そのものが重いからではありません。痛くて飲まなかったからです。そして痛みは数日で引きます。つまり、乗り切れば終わる。

冷たいものが入ります。温かいスープは痛みを強めます。経口補水液を凍らせて削ったもの、アイス、ゼリー、冷やした牛乳や豆乳、冷たい麺。塩味と酸味とスパイスはどれも傷に当たるので、オレンジジュースやトマト、炭酸は避けてください。ベトナムのコンビニや薬局で手に入るものだけでも、選択肢は十分あります。

量より回数です。コップを渡しても飲みません。スプーンやスポイト、注射器型の投薬器で少量を何度も。そのやり方のほうが入ります。ストローは吸う力が要るので嫌がる子もいますが、口の痛い部分を避けて通せるので合う子もいます。両方試してください。

食べなくても数日は構いません。飲んでいれば、体重は落ちても戻ります。おむつが濡れているか、涙が出るか、口の中が湿っているか。見るのはこの三つです。

なぜ手指消毒だけでは足りないか

このウイルスは、アルコールの消毒が効きにくい構造を持っています。ホテルの入口に置かれた消毒液を使っても、残ります。石けんと流水で、指のあいだと爪のまわりまで洗ってください。手足口病に限っては、このやり方の差がはっきり出ます。

もうひとつ知っておくべきなのは、症状が消えたあとも数週間、便にウイルスが出ることです。おむつ替えのあとの手洗い、プールやキッズスペースの利用、おもちゃの共有。これが現地での広がり方を決めます。ホテルのプールは熱が下がった翌日に入れる場所ではありません。

大人もかかります。子どもより重いことがあります。手のひらの皮がむけたり、数週間してから爪が浮いて剥がれたりします。爪が剥がれるのは驚きます。生え変われば元に戻ります。

旅程と帰国の判断

飛行機そのものが病気を悪くすることはありません。問題は二つです。機内で飲ませ続けられるか、熱と痛みのピークがどこに来るか。発疹が出た初日と二日目は、移動を一日ずらす価値のある時期です。

滞在先で診察させていただく場合、往診でできるのは脱水の程度の評価、神経の兆候の確認、口の痛みへの対処のご指示、そして必要なら点滴と病院へのご紹介です。ホイアンやニャチャン、ホーチミンなど各地域には、その土地に暮らし、医療従事者の資格を持つ医師・看護師がおり、ダナンから人を向かわせることはございません。小さなお子さまの場合は、お伺いできる時間の見込みを率直にお伝えいたします。

要点だけ

見張るのは熱ではなく、飲めているかと神経の兆候です。冷たいものを少量ずつ何度も。寝ているときのびくつきの繰り返し、ふらつき、繰り返す嘔吐のどれかが出たら、その時点で115か小児の救急へ。消毒液ではなく石けんと流水。便にウイルスが残るので、プールはしばらく休む。

参考文献

  • WHO Western Pacific — Hand, foot and mouth disease: https://www.who.int/westernpacific/health-topics/hand-foot-and-mouth-disease
  • 厚生労働省検疫所 FORTH: https://www.forth.go.jp/
  • 外務省 世界の医療事情: https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html
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