約9分 · 2026-10-22 更新
熱帯で目が赤くなったとき:はやり目と、コンタクトによる角膜の潰瘍
結膜炎で片づけてよいものと、その日のうちに眼科へ行くべきものの境目。海水やシャワーでレンズをつけたままにすると何が起きるか。レンズケースを捨てずに持っていく理由。

ベトナムで目が赤くなる理由は、だいたい四つに収まります。ウイルス、細菌、アレルギー、そしてコンタクトレンズ。最初の三つは数日から十日ほどで引きます。四つめだけが、視力を持っていく危険を持っています。
見分けるための手がかりは、赤みの強さではありません。痛みの質と、視界が変わったかどうか。かゆい目は待てます。痛くて開けていられない目は待てません。
先に読む:その日のうちに眼科へ
ベトナムの救急番号は115です。日本の119ではありません。外傷と化学物質の場合はまず流水で洗い、そのうえで次のどれかがあれば当日に眼科の診察を受けてください。
- 黒目のまわりが輪のように赤く、まぶしくて目を開けていられない
- 黒目の表面に白い点やくもりが見える
- 視界がかすむ、ゆがむ、見えない部分がある
- 強い痛みがあり、鎮痛薬を飲んでも引かない
- 薬品や石灰が目に入った、とがったもので目を突いた
- 急に片目が見えなくなった、目の前に幕やカーテンが下りたように感じる
- 目の痛みに加えて、吐き気と強い頭痛がある
最後の組み合わせは、眼圧の急な上昇で起きることがあります。目の病気として扱うものです。頭痛薬で粘るとその日を失います。
コンタクトレンズを使う人が知っておくこと
熱帯での条件がそろいます。海で、プールで、シャワーでレンズをつけたままにする。暑いので水道水でケースをすすぐ。汗で目をこする。手が乾かないまま着ける。この一つずつは小さい。重なると角膜の表面に傷ができ、そこへ水の中の微生物が入ります。
角膜の感染は結膜炎とまったく別の病気です。痛みが強く、光が刺すようにまぶしく、涙が止まらず、黒目のまわりに輪のような赤みが出ます。進むと黒目に白い濁りが残ります。それは治ったあとも、視力として戻りません。だからこの記事で、ここに最も行数を使っています。
水道水の中に生きる微生物が関わる場合、治療は長くなります。効く薬が限られます。レンズを水道水ですすぐ、ケースを洗って逆さに置かず伏せたままにする、保存液を継ぎ足して使う。この三つは、現地で特にやってしまいがちです。そして特に代償が大きい。
痛みが出たときの手順
- レンズを外す。そのまま入れ直さない
- 外したレンズとケース、保存液のボトルを捨てずに持っていく。原因を調べるのに使える
- 眼帯で押さえない。閉じた湿った環境は菌にとって都合がよい
- 手持ちの点眼薬を流用しない。特にステロイドの入ったものは、感染を広げる方向に働くことがある
- 痛みを我慢して旅程を続けない。角膜の感染は、日単位ではなく時間単位で進むことがある
はやり目は、よくなるが周りにうつる
アデノウイルスによる結膜炎は、片目から始まります。数日後にもう片目へ移ります。ごろごろする、涙のような目やにが出る、朝まつげが軽くくっつく、耳の前を押すと痛いしこりがある。これが典型です。熱と喉の痛みが一緒に出る人もいます。
効く薬はなく、時間が治します。そのぶん問題は感染力です。タオル、枕、プール、スマートフォンの画面、ドアの取っ手。同じ部屋の人にほぼ確実に広がる。タオルを分け、共用のプールを休み、目を触った手で何も触らないようにしてください。
細菌によるものは、目やにがべったりとして黄色く、朝にまつげが固まって開けにくい。こちらは点眼で短く済むことが多い。どちらか自信が持てないときに、自己判断で点眼薬を選ぶ。はやり目を抗菌薬で粘ることになります。時間だけが過ぎます。
アレルギーと、バイクで入ったもの
両目が同時にかゆく、こすると気持ちよく、こすったあとさらにかゆい。これはアレルギーの形です。ベトナムの都市部では砂と排気、乾季の粉じん、エアコンの風、そして線香の煙が引き金になります。朝より夕方に強いことが多い。冷たいタオルを当てるのと、こするのをやめるのが基本です。こするのをやめるのが難しい。
バイクで走っていて虫や砂が入る。この国でとても多い出来事です。まぶたの裏に異物が張りつくと、目を動かすたびに角膜をひっかきます。流水でまぶたを裏返すようにして洗い、それでも異物感が残るなら、見えないところに残っていると考えてください。
薬品が入った場合、洗う時間は思っているより長く必要です。時計を見ながら、途中で切り上げずに流し続けてください。短く洗って受診するより、長く洗ってから受診する。そのほうが結果がよくなります。
やってはいけないこと
- 水道水で目を洗って済ませる。洗浄が必要な場面以外では勧められません
- 母乳、唾液、茶葉を目に当てる。どれも感染を足す行為です
- 他人の点眼薬を借りる。容器の先が触れた目から目へ移ります
- 黒目に白い点が見えているのに、翌日まで待つ
往診でできる範囲
問診、まぶたと白目の観察、全身の症状の確認、視力のおおまかな評価、そして眼科への紹介です。角膜に傷があるかを調べるには、細隙灯顕微鏡と染色が必要です。これは据え置きの機械です。鞄に入れて運べません。ここは正直に書きます。
私どもの体制もお伝えいたします。ホイアンやフエ、ニャチャンなど各地域には、その土地に暮らし、医療従事者の資格を持つ医師・看護師がおり、ダナンから人を向かわせることはございません。ただ目の症状の場合は、設備のある眼科へ直接向かっていただくほうが速いことが多く、どこへ行けばよいかのご案内が往診よりお役に立つ場面がございます。
要点だけ
かゆいだけなら待てる。痛くて開けられない、まぶしい、かすむのどれかがあれば待てない。レンズを使う人は外して、ケースごと持っていく。手持ちの点眼薬を流用しない。水道水でレンズに触れない。薬品が入ったら、短く切り上げずに洗う。
参考文献
- WHO — Blindness and vision impairment (fact sheet): https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/blindness-and-visual-impairment
- WHO — Drinking-water (fact sheet): https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/drinking-water
- 厚生労働省検疫所 FORTH: https://www.forth.go.jp/